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PG INSIDE

OKURA x SHINDO x FUNAHASHI

これからのプラチナゲームズをつくる
大倉麻衣(グラフィックデザイナーアートワーク担当)×舟橋英志(グラフィックデザイナー キャラクターモデリング担当)× 進藤雅人(サウンドデザイナー)


ここでは、次代のゲームづくりを支える3人を紹介する。アートワーク担当として、キャラクターデザイン等を行う大倉氏、3D上でキャラクターのモデリングを行う舟橋氏、ゲームの効果音を担当する進藤氏。彼らは入社4~6年の若手のなかでも、プロジェクトにおいて重要なポジションを任され、そしてそれに応えるため精力的に活躍するメンバーだ。担当するパートもバックボーンも異なる3人が、チームでのものづくり、これからのゲームづくりについて語る。
[構成・文:editorial studio MUESUM]
[2012/07/20]


ゲームづくりにかける想い


舟橋:もともと絵を描くことが好きだったのですが、小学校5年生くらいの時には既にキャラクターデザイナーになりたいと日記か何かに書いていたのを覚えています。今はキャラクターモデラーとして、3Dツール上でキャラクターを生成し、造形や質感などの設定を行っています。小学生の頃、よく画用紙に好きな映画の主人公と、登場人物が使いそうな武器や拳銃を勝手に想像して描いて、オリジナルのカードゲームをつくって遊んでいたんです。当時流行っていたポケモンカードを両親の方針で全然買ってもらえなかったので、初めは仕方なくだったのですが、人に遊びを提供できる喜びを感じて。「進みたい道はこれだ」と、幼いながらに思うようになりました。中学校、高校、大学と、そんなことばかりしていましたね。

大倉:私は、ディレクターと相談しながらゲームの世界観を絵として表現するアートワークセクションで、主にキャラクターデザインを担当しています。2Dで絵を描く仕事です。私の場合は、幼いころからスポーツばかりで、ゲームや漫画、アニメは、両親に一切見させてもらえず、大学も体育大学に進学しようと思っていたくらいでした。それが、デザイナーの父の勧めで美大に進学することになり、モノづくりの楽しさに目覚めてしまったんです。プラチナゲームズにWEBデザイナーとして入社しましたが、開発中のゲームのユーザーインターフェイス(UI)の仕事を手伝ったことがきっかけで、ゲーム制作に携わるようになったんです。3か月だけという条件だったはずが、もう6年になります(笑)。今は、キャラクターデザインを担当していますが、絵を描くということに留まらず、ゲーム制作にかかわる仕事なら何でもしたいと思うようになりました。とにかく周りの人に楽しんでもらいたいという想いが根本にあるように思います。

進藤funahashi_ookura_shindo_8:僕はバンド活動を行っていたのですが、貴重なお金と時間を使ってライブに来てくれるお客さんに満足してもらうために、毎回中途半端な演奏は出来ませんでした。今はサウンドデザイナーとして、ゲームの効果音を制作していますが、ゲームを買ってくれる方に楽しんでもらいたい、がっかりさせたくないという想いは変わりません。お客さんの反応が一番のモチベーションですね。

舟橋:進藤が音づくりに興味を持ったきっかけはどんなことだったんですか?

進藤:僕は生まれたときから身体が小さかったので、鍛えるために小学校に入る前から柔道や剣道、空手、水泳、サッカーといろんなスポーツをしていました。サッカーは、高校に入るまで続けていたのですが、あるとき重度の病気にかかって、車椅子生活を余儀なくされて。手術して日常生活を送れるようになっても、今までどおりの運動はできず、どうしたらいいんだろうと悩みましたね。気持ちを切り替えるために、バイトして貯めたお金でシンセサイザーを買って、バンド活動や作曲活動に夢中になりました。

大倉:やりたいことを諦めないといけなくなるのは辛いですよね。私も小さいころから絵を描くのが好きでずっと絵を描いていたのですが、中学生のときに「上手く描けない……」と挫折にも近い気持ちになった時期がありました。そのことで、どちらかというと身体を動かす方に専念するようになり、美大に入るまでは空手や長刀などの武道に突き進んでいました。

進藤:一見結びつかないように見えたとしても、当時夢中になっていた経験が今の自分をつくっているなと思います。先日、ハードワークが続いていたときに、ふと「なんでこんなに頑張れるんだろう」と考えたことがあったんですが、「あ、スポーツだ」って思って。サッカーや、柔道で心身ともに鍛えられたことが下地になっている。そう考えるとある種の「忍耐力」みたいなものが、僕たちのようなものづくりに関わる業種には求められるのかもしれませんね。

舟橋funahashi_ookura_shindo_1:そうですよね、ここ一番の踏ん張りは重要だと思います。それができるのとできないのとでは、実際に最終的なクオリティが変わってくる。スケジュールぎりぎりまで、粘り強く自分が納得できるものを出せるかにかかっています。ただ、その根本に、人を楽しませたいという気持ちがあることが重要だと思うんです。

進藤:僕の場合は、以前、楽器店の販売員をしていたのですが、お客さんからお礼を言われたり、喜ぶ反応が直に見られるのは嬉しかったですね。でも、店員としてクリエイターやアーティストと接するうち、刺激を受けてしまって。自分もクリエイティブなことがしたいと一念発起し、かねてから興味があったゲーム業界を目指すようになりました。まずは技量を磨くために、それまでの貯蓄を使って1年間作曲に専念していたんです。1年後、自分が納得できる作品を携えて、プラチナゲームズのミュージックコンポーザー職(BGM)に応募しました。思っている以上に、求められるハードルは高く不採用となったのですが、その後、サウンドデザイナーの急募があり、再度挑戦して晴れて入社することになりました。

大倉:社内でも、進藤の入社は噂になっていましたよ。ネット上で有名な作曲家が入社してくるって。たしか自己紹介代わりに制作した曲をもらったことを憶えています。

進藤:そんなこともありましたね(笑)。でも、最初のうちは、サウンドデザイナーとして要求されるものを全然つくれなくて、半年くらい悩みました。当時はあわよくばBGMに異動できたら……という野心もあったのですが、効果音制作の面白さを見つけてからはミュージックコンポーザーへの未練は全くなくなりましたね。

大倉:私自身は、悔しい想いの連続ですが、「なにくそ」という負けず嫌いな気持ちと、自分も周りの人たちも納得できるものを世に出して、ユーザーに満足してもらいたいという気持ちに突き動かされています。


イメージを共有すること


舟橋:僕は入社して今年で4年目になりますが、ようやく仕事に慣れてきたところです。入社当時を振り返ると毎日が必死でした。ディレクターが伝えようとしていることを全然理解できなくて……。言葉どおりにつくってみても、「全然違う」と一蹴されることも多く、悩みに悩む日々を過ごしていました。

大倉:それは、誰もが通る道ですよね。ゲームの世界観を共有することで解消されることなのでしょうけれど、その方法が入社したての頃はわからない。

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進藤:世界観をつくりあげるためには、ディレクターから出てくる言葉の意図を汲みながら、自分なりの答えを導きださないといけない。そう頭では理解していても、なかなか簡単なことではないんですよね。当時はゲームの世界観を理解することや、言われたとおりにつくることにとらわれ過ぎて、制作がうまく進まないことがありました。そんな時、独自の発想を活かした先輩たちの音に、「こういうアプローチもありなのか」とハッとさせられたことを覚えています。それからは、失敗してもいいので自分も同じようにアイデアを出していこうと思うようになりました。

舟橋:例えば、ディレクターから椅子の制作を頼まれたときに、椅子らしい「形状」を欲しているのか、それとも座れる「機能」を求められているのかを考えてみる必要がある。後者であれば、丸太も椅子になるし、ガードレールだって椅子と捉えることができます。ゲームの世界観が共有できていれば自ずとわかることも、与えられた言葉だけに囚われてしまうとダメなんですよね。

進藤funahashi_ookura_shindo_3:その一方で、僕の場合は「どういう音でいきましょうか?」とディレクターに相談すると、「うーん、そうだな……かっこいい音!」と返ってくるときがあるんです。これが一番難しい要求(笑)。かっこいい音は人それぞれなので、ゲームの世界観にハマるかっこいい音をつくるためには、圧倒的な数をつくってみるしかないんですよね。

舟橋:同じように「良い感じで!」と頼まれるのも、嬉しいのと同時に恐怖でもありますよね(笑)。ゲームの世界観をきちんと理解していないと、ちゃんと提案できませんし。けれど、失敗するリスクを承知でチャンスを与えてもらっているので、「なんとしてでも応えたい!」と張り切ってしまいます。

大倉:私の場合は、ゲームの世界観やキャラクター設定もない状態からスタートすることが多いので、とにかく手を動かして、形をつくることから始めます。言葉で説明することが得意ではないので、ディレクターとイメージを共有するときには、必ずビジュアルを用いたコミュニケーションを大切にしているんです。そこで、ディレクターから「これしかない! これでいこう!」という言葉が出てくる瞬間が、一番嬉しいですね。

進藤:そういう意味では、手を動かしながら世界観をつくりあげていくような感覚ですよね。個々で試行錯誤しつつ、チームがつくっている流れや目指す方向を共有することで理解できることってたくさんあるし、ひとつひとつのパーツが全体をつくりあげていく感覚はあります。

大倉:そうですね。ある程度任せてもらえることって、すごくありがたいです。こういうキャラクターの設定であれば、このような反応をするんじゃないかとか、勝手に想像を広げていくことで、ゲームの世界観がつくられてディテールが詰まっていく。もちろん、考えた設定にNGが出ることもありますが、勝手に設定を考えていくことに対してのNGはないですね。その点、私たちが創造力をふくらませられるように、ディレクターも考えながら話をしているように思います。

進藤funahashi_ookura_shindo_4:一言で伝わる言葉を選んでくれていますよね。ただ、それでも方向性を迷うことは多々あって、そういうときは、周りの人たちがこれってこうだよねと導いてくれることもある。なので、自分ひとりで悩むというより、チームで試行錯誤している感覚が強いです。

舟橋:もちろん、どれだけチームのミーティングで盛り上っても、アイデアが採用されないこともあります。けれど、その盛り上がった瞬間が大切で、みんなが「ビビビッ」と感覚を共有することでチームに良い風が吹くんです。

進藤:そういう意味では、『ベヨネッタ』の制作現場はエキサイティングでしたね。シリアスな世界観だと思っていたのですが、少し笑いを含ませる部分もあったので、「これを入れたらおもしろいだろうな」という音をつくって、ディレクターの神谷に持っていったんです。神谷がそれを聴いて、「クスッ(笑)、くだらね。これでいこう!」と言ってくれた瞬間の喜びは忘れられません。

大倉:『ベヨネッタ』の開発時は、進藤が提案した音のアイデアから、デザインを起こしたこともありましたね。

進藤:シューティングステージで、登場人物同士の通信音声を入れたいと考えたんです。ただ、通信をしている設定が無いので、僕が音の提案をしたことから、通信機器のデザインなどを起こしてもらったんです。サウンドデザイナーでもこういう関わり方ができるんだと、音のアイデアからゲームをつくる可能性を感じましたね。


それぞれのスタイル


進藤:舟橋は今年で入社4年目、大倉は6年目ですけど、仕事に対するモチベーションってどんなことですか? 僕の場合は、とにかくユーザーの反応が第一。ゲームはタダではないし、自分の時間を削ってすることなので、遊んでもらうからには、何かしら満足できて感動してほしい。そう考えると、中途半端なものはつくれませんね。ありきたりですが、重要かなと思っています。

舟橋:そうですね。自分がつくったもので楽しんでもらいたいという気持ちは僕もあります。まだ手がけたゲームが世に出ていないので、ユーザーの反応を見る機会はないのですが、発売されるまでは、社内の人やディレクターに楽しんでもらえるよう励んでいます。

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大倉:私は、モチベーションというより、自分がまだまだ理想に及ばないと自覚できるからこそ、頑張れている感じです。ディレクターやプロデューサーからは「お前は、ずっとここにいていいからな」と言ってもらえて嬉しい限りなんですけど(笑)。だけど、女性だし、家庭をもったら今の仕事の方法では厳しいかもしれません。きっと同じような悩みを抱える後輩も多いと思うんですよ。だから、その指針になる働きができたらいいですね。

進藤funahashi_ookura_shindo_2:考え方、経験ともに、自分の先を歩いているようなモデルとなる人の存在は重要ですよね。僕にとっては神谷であり、チームの皆でもあるわけですが。そういう人たちと一緒にゲームをつくれることは、非常に幸運だと思っています。散々、「仕事は大変だ」と言っていますが、ここで得るものはとても大きいと思います。

大倉:プラチナゲームズには忍耐力や根性がある人が多いですよね。一緒にゲームをつくる仲間として、きついことを言われようが、自分がやりたいからやっているんだと、前に進める環境でもある。

舟橋:僕は、自分が忍耐や根性のある人間だとは思わなくて、でもそれに代わる何かがあるからこそ、3年間やってこれたのだと思っています。何が忍耐になるのか、また、何が忍耐の代わりになるのかは、それぞれ違うと思うんです。そこに身を置いて試してみないとわからない。だからこそ、誰かに選ばれているんじゃなくて、自分がここを選んでいるんだという意識を持って仕事をしている人と、一緒にゲームをつくっていきたいなと思っています。

進藤:確かにそういう人が多いような気がしますね。そういった意識を持った人が、自然とこの会社に集まってきている。そのせいなのか、独自の価値観がある少し変わった人が多い(笑)。

大倉:自分の信念のもとに物事を遂行できる人が集まってきているのかもしれないですね。

舟橋:そうですね。会社やチームのスタイルとは違っても、自分のスタンスを理解して、その人なりのやり方を自己分析のもとに確立していけばいいのではないでしょうか。それに対して、「そのやり方で良いから同じ目標に進んでいきましょう」と言ってくれるのが、プラチナゲームズという場所だと思うんですよね。